第 115 集 (2013年12月)

□ 日韓「グローバルな視点で協調を」
              李丙琪・韓国大使が広島で講演

韓国の李丙琪・駐日大使が12月2日(月)、広島を訪れ中区のリーガロイヤルホテルで、広島県日韓親善協会と民団広島県地方本部主催の講演会に出席。首脳会談も開かれない、という冷え切った状況にある日韓関係について語り「(国交回復50年に向けて)両国はグローバルな視点で協調を」と訴えました。
  講演会は日韓親善協会の会員や在日韓国人など220人が会場を埋め、(東北の震災地訪問を除き)地方では初めてという大使の、淡々とした中にも難局打開へ熱のこもったスピーチに耳を傾けていました。
  李大使は韓国の駐日公館長会議に出席するため広島を訪問したもので、講演のあと広島県日韓親善協会の「忘年・会員の夕べ」にも、国内に駐在する10名の総領事とともに出席しました。

   以下は講演要旨です。

  広島は自動車の二次産業から、「お好み焼き」に象徴される商業まで経済の活発な街で、2つの世界遺産のある平和な美しい町です。
  その広島の日韓協会は、日本でも範たる優れた活動を行っており、敬意を表します。
  現在、韓日関係は、難しい状況にあり、進展、後退を繰り返していますが、確実に前進していることは確かです。
  GTPの格差は縮まっており、国交回復の65年には、わずか1万人だった交流も今は550万人に上っています。02年のW拝サッカー以来、交流は、加速されています。たとえば韓国内の日流でいえば、韓国のマンガ部門の人気トップ10に、日本のマンガが6本も入っています。

  韓国の歴史を振り返ると、1945年以後、3つの時期に大別できます。
   ①  45~65年 戦後の混乱と建国の時期
   ②  65~88年 東西冷戦状況下、国民の感情的な対立の時期
   ③  88~現在  民主化と経済の発展した時期
  このように(国内の)状況がポジティヴに変わり、日韓関係も歴史認識をめぐって停滞はあったものの、各種の交流は活発化してきました。
  まもなく国交回復50年の節目を迎えますが対立と協調を繰り返したこれまでを1・0時代とすれば、50年以降は2・0時代として安定した関係を構築していく時代としなければなりません。

  北東アジアの不安定な中、とりわけ北朝鮮の核問題の深刻な状況で、韓日関係の関係は、ますます大切だと考えます。
  北朝鮮の金正恩政権は挑発を強めていますが、自由経済など共通の価値を有している両国が、グローバルな視点でパートナーシップを発揮することが要請されていると考えます。
  具体的には、温暖化など気象変動、エネルギーの安全保障、高齢化社会への対応など協調して対応するグローバルな問題は多いです。
  新しい時代の幕を開けるため、韓日間の克服すべき課題として、日本政府は、しっかりとした歴史認識を持ち、宗教や言語を奪われた民族のことを考えてほしいと思います。
  日本は、最も活力の溢れる国として、世界の平和に対しリーダーシップを発揮しなければなりません。そのためには、まず正しい歴史認識のもと、隣国と仲良くすることが大切です。
  村山談話・河野談話は隣国への正しいメッセージです。これをベースにして信頼の関係を確実なものにしなければなりません。
  従軍慰安婦は、現在56人で平均年齢は86歳、解決が急がれます。これは、こう着した韓日関係を突破する糸口にもなりますし、日本の国際的なステータスの向上にもつながることと認識すべきだと考えます。
  次の若い世代が手を組むうえでの課題を考えるとき、韓国の若者は日本が(戦後)いかに世界の平和と繁栄に貢献したかを学び、日本の若者は隣国が(過去の植民地時代に)どんな経験をしたか、学んで欲しいと思います。
  ヒロシマは、原爆を体験して反戦・平和をリードする地です。その広島でお話しできたことを喜びといたします。
                  カムサハムニダ。