第 91 集 (2011年09月)

□ 「世界陸上」の大邱へチャーター便で162名
         金市長が歓迎宴 開会式・女子マラソンも観戦

「世界陸上」が開かれた大邱広域市を、広島から総勢162名の市民訪問団が26日(金)、アシアナ航空のチャーター便で訪れました。松井一実広島市長を代表とする広島市代表団のほか、10名の「市議会日韓親善有志の会」訪問団、広島商工会議所の深山英樹会頭らも参加しました。広島県日韓親善協会からの参加者は安東善博会長をはじめ20名でした。
  一行は同日夕、出発ロビーで結団式をしたあと、午後8時20分に広島空港発、およそ1時間で大邱空港に着きました。チャーター便による大邱訪問は姉妹提携10周年の2007年以来4年ぶりです。
  「世界陸上」の開幕は翌27日。この日の朝、注目の女子マラソンがありました。市役所近くの目抜き通りをスタート・ゴールに、市内を2周するコースで行われました。スタート・ゴール地点には仮設の観覧席が設けられ、訪問団もこの観覧席でスタートの模様を見守りました。結果は期待されていた尾崎好美選手ら日本勢が振るわず最高が赤羽有紀子選手の5位に終わりました。
  訪問団はこのあと、バスに分乗して東北部の八公山の近くにある新羅の古刹・桐華寺を訪ね提灯つくりを体験したり、漢方薬の一大拠点として知られる市中心部の薬令市を見学したりして市内観光を楽しみました。
  夜6時30分からは大邱スタジアムで「世界陸上」の開会式。4万5000人の観衆が見守る中、李明博大統領が開会宣言し、音と光と演舞を組み合わせた華やかなページェントを繰り広げました。場内に会わせて会場の外では花火が打ち上げられ開会式を盛り上げました。このあと競技に移り「男子走り高跳び」、「女子400メートル」、「男子円盤投げ」などの競技があり、優勝した円盤の室伏広治選手の予選出場には、訪問団が陣取ったスタンドから、盛んな声援が飛んでいました。


大邱3日目の8月28日(日)は新羅の古都・慶州に移動。名刹・仏国寺や海印寺、古墳公園などを見学して回りました。
夕方には再び市内に帰り「姉妹都市の日記念式」に参加しました。大邱広域市は広島をはじめ、神戸・青島など日本と中国の5都市と姉妹提携しており、この日は市内の国債報償運動記念公園で松井広島市長ら5都市の代表があいさつしたあと、各都市のお国自慢を披露。広島からは太鼓グループ「かぶら屋」の男女8名が出演し、和太鼓と舞踊のコラボで会場から大きな拍手を受けました。

訪問団を迎えて金範鎰市長が主催した歓迎夕食会は28日午後6時30分から。「大邱農業の父」とも言える水崎林太郎によってつくられた「寿城池」のほとりのレストランでありました。
  世界212ヶ国の代表や世界陸連首脳を迎えて超多忙な金市長でしたが、自ら夕食会に出席。「広島を訪問するたびに市民から大歓迎を受ける。姉妹都市の中でも広島は別格。これからは姉妹ではなく夫婦になろう」とユーモアをまじえて挨拶。松井市長も「姉妹が夫婦になるのは難しいが、努力して友好という子どもを残しましょう」とユーモアで応じました。
    このあと広島県日韓親善協会の安東善博会長と大邱日本協会の呂博東会長が、この日昼に署名した姉妹提携協定書を交換。両会長の発声で乾杯し韓国側の出席者を合わせた凡そ300名が和やかに懇談しました。


□ 広島県日韓親善協会と大邱日本協会が姉妹提携

広島県日韓親善協会の安東善博会長と大邱日本協会の呂博東会長は「世界陸上」開催中の8月28日(日)午後、大邱広域市のホテル・ゼイスで両協会会員30名が見守る中、姉妹提携文書に署名。同日夜の大邱市長主催の市民訪問団歓迎夕食会で、両市長立会いのもと文書を交換しました。
  姉妹提携文は前文に続いて2項目からなり、第1項目で両協会は「友好と善隣の精神を基礎として経済、社会、文化、スポーツ、青少年その他、諸分野にわたって広範な交流と協力を積極的に推進する」とし、第2項目ではこれによって「両市の市民間、および日韓両国の国民間の相互理解を一層促進するとともに、世界の平和と繁栄に寄与する」としています。
  広島県日韓親善協会は堀口会長(当時)が社長をつとめていた中国放送が1994年に大邱MBCと姉妹提携して以来、大邱の韓日親善協会と交流していました。その後1997年に広島市と大邱広域市が姉妹提携し、民間諸団体の交流も盛んになりましたが、反面、大邱韓日協会は活動が中断。2007年になって「大邱日本協会」という新しい交流団体が誕生したため、広島県日韓親善協会は大邱日本協会をパートナーとして青少年囲碁交流などの事業を展開してきました。その後、大邱日本協会は5月に開かれる「大邱の日」に毎年十数名の訪問団を送るなど、広島市との市民交流の中心となって活動しています。こうした中、「世界陸上」という大邱広域市の一大イベント開催を機に両協会が姉妹提携を結ぶことにしたものです。当協会の韓国の協会との姉妹提携は1994年の釜山韓日親善協会との提携に続いて17年ぶり、2件目。

□ 両市長 両会頭が経済交流で足並み

 就任後はじめて大邱広域市を訪問した広島市の松井一実市長は8月27日(土)午前、広島市代表団の金子和彦市議会副議長、広島商工会議所の深山英樹会頭、広島県日韓親善協会の安東善博会長らとともに大邱市役所に金範鎰(キムボミル)市長を表敬訪問しました。
  松井市長と金市長は5月のフラワーフェスティバルでの「大邱の日」で顔合わせを済ませている「旧知の仲」。市役所前では休日にもかかわらず、職員十数人が出迎え、車を降りた松井市長を金市長が固い握手で歓迎しました。松井市長を応接室に案内した金市長は雁の彫り物を贈り「雁は夫婦和合の象徴。これから姉妹ではなく夫婦のように仲良くしましょう」と述べました。これに対して松井市長は宮島のシャモジをプレゼント。「シャモジは敵を召し取る、成功勝利するという意味が込められています。世界陸上が成功しますように」とエールを送りました。


 広島市の松井一実市長と大邱広域市の金範鎰市長は翌8月28日朝、広島市代表団や広島県日韓親善協会の安東善博会長らをまじえた金市長主催の朝食会でも懇談しました。この席では野球やサッカーなどプロスポーツの分野の交流が話題になったほか、経済交流についても話し合われました。この中で金範鎰市長は「両市の間の経済交流を年間1億ドル(日本円にして80億円)を目標にすすめてはどうか」と提案し、松井市長からも異論はありませんでした。
  一方、広島商工会議所の深山英樹会頭は8月27日、大邱市役所表敬訪問のあと、佐々木尉文副会頭、安東善博・広島県日韓親善協会会長とともに大邱商工会議所を訪問しました。大邱商工会議所では李仁中会長をはじめ大邱日本協会前会長の鄭台一筆頭副会長ら幹部役員が総出で迎えました。李仁中会長は歓迎あいさつで「大邱と広島は1997年の姉妹提携以来、文化・芸術・スポーツの交流は活発だが、経済の交流があまりない。これからは経済分野の交流をすすめたい」と述べました。
これに対し深山会頭は「広島県日韓親善協会や韓国総領事館と、経済交流懇談会といったような組織が作れないか、検討している」と前向きな姿勢を示しました。
  このように今回の市民訪問団の大邱訪問を機に、両市の行政と経済のトップ同士が「経済交流促進」で足並みを揃えた形となりました。
  広島市と大邱広域市の経済交流については8月28日、広島県日韓親善協会と大邱日本協会が取り交わした姉妹提携の協定書にも盛り込まれでいます。